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九州大学名誉教授 古瀬充宏先生(20回生)が紫綬褒章を受章されました
令和4年秋の紫綬褒章を、20回生の古瀬充宏先生が受章されました。同窓会事務局へも古瀬先生の同級の方や、恩師に当たる旧職員からご連絡をいただき、大きな喜びを感じました。また、大変誇らしく感じています。
古瀬先生は、名古屋大学農学部助手、九州大学助教授を経て、平成12年より九州大学教授として様々な研究をされ、現在は名誉教授となられています。長年にわたり、畜産学、特に栄養学と行動学の教育・研究に努められ、またヒトの健康改善に寄与する研究に取り組まれました。
同窓会事務局より直接古瀬先生にご連絡させていただきましたところ、快く同窓会HPにお言葉をいただける運びとなりました。以下に、古瀬先生からのメッセージを掲載せていただきますとともに、今回の受章を同窓会一同お祝い申し上げます。
紫綬褒章を受章して
古瀬 充宏
同窓会事務局から紫綬褒章の受章に対して一言をと依頼を受けましたので、感じるところを少し述べさせていただきます。
内閣府によれば、紫綬褒章の受章対象は、「科学技術分野における発明・発見や、学術及びスポーツ・芸術文化分野における優れた業績を挙げた方」とあります。スポーツ分野ではオリンピックの金メダリストが中心となり受章していますが、他の分野では具体的に何を成し遂げたときにその対象に該当するかが不明です。そのため、紫綬褒章というものを夢に描くことはできても自分には関係ないものと思っていました。また、私が受章した学術分野はその学術領域が余りにも広いために、自分の関わる領域が何故注目され、また、その中で私が何故選ばれたのかが不思議でなりません。大きな喜びであるとともに驚きで、受章を謙虚に受け止めている次第です。
私は20回生ですから中村高校に在学したのは50年も前になります。進路選択の際に理系を志望していましたが、担任であった川村久美子先生からは文系に進んだ方が良いとの指導を数回受けました。理系の科目ができないことから理系志望は無謀に思われたのかもしれませんが、私は動物に関することを学びたく最終的に理系に進みました。その後、希望する職に就くことができた訳ですが、仕事の内容は想像とは異なり、年齢を経るにしたがい書類や論文の作成が中心となり、文系の素養の重要性を知ることになりました。文系と理系の垣根は作る必要はなく、また、成績で進路を決めるのではなく好きな道に進むことも選択肢の一つではないでしょうか。
受章の対象として何をしたかは具体的に述べませんが、それに通じるものは、好きなことに巡り会えたかどうかが重要と感じています。小さな子供が何かにずっと夢中になっている際に、周りの多くの大人は他にも目を向けさせようとしたり、または、止めるように働きかけることがあります。しかし、好奇心が我を忘れさせ、楽しくて仕方がない時間を子供は過ごしている訳です。一生懸命に行っているからといって子供は努力をしている訳ではありません。私自身も、努力をしたというよりは子供の感性の延長で無我夢中になれるものに出会いました。場所は、名古屋から福岡に移り、出発点の栄養学から生理学・薬理学・行動学へとテーマの変更はありましたが、それらは独立しておらず深く関係していました。定年退職まで仕事を継続することができ、その蓄積した成果が対象になったのかもしれません。
受験を目標とする勉強は、時として好奇心を奪い、その結果、受身主体の人間形成がなされ、自らの意思ではなく指示を待って行動することになります。記憶力や理解力が高いことが評価の対象となっていますが、徐々に評価の対象が自問・自答や自学・自習できる能力に向けられてきます。過去のことを知っている、あるいは、理解しているのではなく、新しいものを生み出すことを求められるためです。夢中になれるものを持てば、自問・自答や自学・自習に方向づけられていきます。その結果、矛盾や未知の仕組みに気がつくことがあります。そういう意味で私自身は動物のことを知りたいという気持ちが重要でした。
私は最近まで教育機関に在籍していましたので、在校生に向けても少しお伝えしたいと思います。試験をすれば私よりはるかに良い成績を収めることができる学生を指導してきましたが、夢中になれるものを持っていない、あるいは、見つけられない学生が多くを占めることに驚かされました。受験勉強のせいでしょうか?感受性が低められていると感じ、そのような学生に勧めてきたものは、最後が「ん」で終わるものです。「本」で想像力や好奇心を掻き立て、「自然」の中で落ち着きを取り戻し、「館」、「園」、「展」が最後に付く施設や催しものに行くことで感受性を維持したり高めることに繋がるためです。若い感性を失うことなく大事にしていただきたいと思います。
最後に、今回このような機会をいただきました中村会事務局にお礼を申し上げるとともに、同窓生の皆様のご健勝とご発展を祈念し、筆をおかさせていただきます。